不妊症とは妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものを言います。
日本産科婦人科学会や、世界保健機構(World Health Organization: WHO)では不妊症を「1年間の不妊期間を持つもの」と定義しています。
米国の生殖医学会でも、「不妊症と定義できるのは1年間の不妊期間を持つものであるが、女性の年齢が35歳以上の場合には6ヶ月の不妊期間が経過したあとは検査を開始することは認められる」としています。
また、男女とも加齢により妊娠しにくくなることが知られており、不妊治療を先送りすることで妊娠率が下がることを考えると、一定期間を待たずに不妊治療を行ったほうがいい場合もあります。
そのため、「そろそろ赤ちゃんが欲しいな」、「私の今の状態はどんなんだろう」と思ったら早めに来院していただき、まず私たちにお話していただくことで妊娠へのサポートをさせていただきます。
女性の不妊症原因には、年齢、排卵、卵管、子宮、頸管、子宮内膜症、免疫、原因不明などの因子があげられ、 男性の不妊症原因には造精機能障害、精路通過障害、性機能障害などの因子があげられます。
リプロダクション浮田クリニックでは、不妊治療を行っていくにあたり、不妊の原因に応じた治療法を選択いたします。
月経周期が25日~38日型で、基礎体温が二相性の場合は心配ありませんが、これにあてはまらない方(月経不順)は、排卵障害の可能性が有るので、基礎体温を1か月測定して記入し、早めに受診してください。
まずは、安定した月経周期があるかどうかがポイントになります。
卵管が詰まっている(閉塞)、狭いところがある(狭窄)、腸などの臓器とくっついている(癒着)などで、卵管采が卵子をピックアップできない、精子が通れない、受精できない、受精卵が移動できないなどが不妊原因になります。
特に性器クラミジア感染症は、卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着によって卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になります。
女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。
子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープなどが原因で着床が妨げられていることがあります。
また、子宮の形の異常により着床障害が疑われる場合もあります。子宮の形態異常があっても問題なく妊娠、出産している女性も多いのですが、場合によっては、不妊または、妊娠しても流産を繰り返してしまう原因となります。
排卵期に透明で粘調な帯下(おりもの)の増加がありますが、子宮の奇形や子宮頸部の手術、子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内へ貫通しにくくなり、不妊症になります。
何らかの免疫異常で抗精子抗体(精子を障害する抗体)、特に精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)を産生する女性では、抗体が頸管粘液内にも分泌され、例え運動性の良い精子でも通過を妨げてしまいます。
受精の場面でも、精子不動化抗体は精子が卵子と結合することを妨害し、不妊症になることがあります。
不妊症の検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない場合を、原因不明不妊と呼んでいます。原因不明不妊は不妊症の1/3をしめるといわれていますが、本当に原因がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいます。
検査に異常や問題がないことから大丈夫ということではなく、妊娠していないという事実があるわけですから、検査では明らかにならない原因があると考えられます。
たとえば、卵子が卵管へと取り込まれたか(ピックアップ)、受精ができたか、受精卵が成長したか、受精卵が子宮に着床できたか、また、卵子や精子の質そのものに問題があるのかもしれません。
しかし、これらは通常の検査で明らかにすることができないため原因不明となってしまいます。
これらはステップアップし、体外受精や顕微授精を行うことで解決される可能性が十分にあります。
精子を造る精巣自体の障害です。男性不妊の原因として最も多くみられ、全体の約85%を占めます。
造精機能障害の原因としては、特発性とよばれる原因不明のものや、精索静脈瘤、内分泌障害、停留精巣、ムンプス精巣炎、免疫性因子などが考えられます。
精液中に精子を認めない、FSH値が正常~高値で精路閉塞素因が見当たらず、さらに精巣容量の低下を認めることによって診断します。
精巣で造られた精子は精巣上体、精管を通過して射精されます。この通り道が炎症等によって詰まってしまうと、精子が外に出てこれない「閉塞性無精子症」や精子数が少ない「乏(ぼう)精子症」となります。
精路通過障害の原因としては、先天性のもの(CBAVD)や、精路感染、射精管閉塞、鼠径ヘルニア手術などがあります。診断としては、精液中に精子を認めず、FSH値が正常値で精路の閉塞素因があり、精巣容量が正常であるといったことから診断します。
男性不妊の1割程度にみられます。性欲の低下、勃起障害、射精障害、逆行性射精や膣内射精不能があります。
性機能障害の原因としては、ストレスや過去の性行為の失敗などの心因性のものが多いですが、糖尿病、内分泌異常や骨盤神経障害などによっても起こりえます。
ほとんどの場合、問診によって診断できます。勃起不全(ED)は性機能障害の9割を占めます。心理的要因、技術的要因によるものが多いです。逆行性射精に関しては内尿道口の閉鎖不全により膀胱内に逆行してしまいます。糖尿病、脊髄損傷などが原因になります。膣内射精不能に関しては、射精自体は可能でありますが、膣内で射精が出来ない状態をいいます。誤ったマスターベーションなどによるものが多いです。
不妊症の検査には、女性側の検査と男性側の検査があります。また、検査にも検査施行時期があります。
検査により原因を調べ、不妊治療を行います。
いつでも検査できるもの | AMH(抗ミュラー管ホルモン)~卵巣の予備能力を調べる~、 SIT(抗精子抗体)、クラミジア感染症風疹抗体価、糖尿病、甲状腺機能 |
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月経中に検査をするもの | LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、PRL |
卵胞期 (月経開始から排卵まで)に検査するもの | HSG(卵管造影検査)、HFS(子宮鏡)、超音波(発育卵胞・子宮内膜の測定)、子宮内膜生検(慢性子宮内膜炎の検査) |
排卵期に検査するもの | E2(エストロゲン)、超音波(発育卵胞・子宮内膜の測定)、頸管粘液 |
黄体期 (排卵から月経まで)に検査するもの | P4(黄体ホルモン) |
精液検査の正常値 | 培養士による正確なカウントと、精子特性分析機(SQA クイックチェック)を用いています。 |
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陰嚢部の視診・触診 | 精巣、精巣上体、精管を診察します。精巣の大きさ、かたさ、精索静脈瘤の有無がたいせつです。 |
ホルモン検査(血液検査) | 下垂体から分泌されるFSH・LH・プロラクチン精巣から分泌されるテストステロンなどの検査を採血により測定します。 |
陰嚢部超音波検査 | 陰嚢部にゼリーをつけて超音波のプローベにて精巣容積測定、精巣の性状、精索静脈瘤の有無などを診察します。 |
染色体検査(血液検査) | 高度の乏精子症や無精子症の場合にお勧めしています。クラインフェルター症候群、ロバートソン転座染色体異常の有無がわかります。 |
不妊治療の第一段階として、まずは以下の治療を行っていきます。
排卵日を診断して性交のタイミングを合わせる治療です。排卵予定日数日前に経腟超音波検査により、卵胞という卵子が入っている袋の大きさを測定します。
卵胞の直径が20ミリくらいになると排卵するといわれているため、これを元に排卵日を推定します。排卵を促すだけでなく、質の良い卵子を育てる目的で排卵誘発剤を使用します。
用手的に採取した精液から運動している成熟精子だけを洗浄・回収して、上記の妊娠しやすい期間に細いチューブで子宮内にこれを注入して妊娠を試みる方法です。
乏精子症(精子濃度1,500万/ml以下)、精子無力症(運動率40%以下)、性交障害、抗精子抗体保有症例、原因不明不妊症例が適応となります。